•  フットパス活動の記録

A:町田商店街・老舗と歴史の道
2020.02.09
A:町田商店街・老舗と歴史の道
(鎌倉街道&絹の道)
(町田駅周辺の商店街コース)

講師:歴史古道研究家宮田太郎

   みどりのゆび神谷由紀子


 町田ってどんなところ?市の顔である町田駅周辺には、近代的な大型店舗が立ち並び、大変な賑わいを見せています。その中には何十年も前から続いている個性的な老舗も見られ、商業都市としての新旧を感じる商店街は、遠く戦国時代に開かれた原町田宿に始まっています。また、郊外には多摩丘陵の四季折々の豊かな自然、昔ながらの里山風景と古道などがあり、自然遺産・文化遺産を巡る楽しみもあります。
この新旧、都会と田舎の魅力がバランスよく融合した町田市の魅力を探ろうと、「町田駅周辺の商店街コース」は歴史古道研究家の宮田太郎さんのご案内です。「鎌倉古街道」や幕末の「絹の道」と、その発展がもたらした駅周辺の商店街や賑わいを探訪しました。
 スタートは小田急町田駅東口の「カリヨン広場」から。ここには町田の商業の発展に貢献した「絹の道」の碑があります。1859年に横浜港が開港すると、多摩地域の生糸の集積地であった八王子から横浜への運搬ルートが「絹の道」“幕末のシルクロード”と呼ばれ、町田はその重要な中継地となりました。
ここから小田急線第一踏切を越えると鎌倉街道“秩父山の道”を北西方向へ進み、専門学校なども立つ住宅街、「馬頭観音」を経て「町田シバヒロ(芝生広場)」で休憩。“馬”といえば、その昔生糸を運んだ「絹の道」は荷馬車が主役で、創業130年余を誇る馬肉専門店「柿島屋」は歴史の名残でもあります。ここから府中方面を背にして鎌倉街道“上の道”に入り、小田急線第二踏切を越えると中世・原町田宿成立の起点(二つの鎌倉街道のY字合流点)に。今では「サルビア」の愛称で親しまれる民間交番が立ち、裏手には小さな池「まちだの泉」があります。
 原町田大通りを渡ると、町田有数の賑わいを見せる原町田中央通りには「河原本店」(明治28年創業)、「柾屋商店」、時代に合わせた製菓材料でも知られる「富澤商店」など老舗乾物店が軒を並べます。河原本店では店主ご夫妻に昆布の種類や産地の興味深い話を聞きながら、料理好きは品選びに夢中でした。
それにしても、なぜこの街道には乾物店が多いのか?絹の道を通って横浜で生糸を荷下ろしした帰りに、保存しやすい海産物や肥料、舶来品などを仕入れて戻り、商うようになったのです。また、物資だけでなく外国の思想や文化をも伝える中継点となりました。横浜開港によって来日した英国人写真家F.ベアトが撮影した幕末の原町田中央通り4丁目付近の写真も残っています。
 さらに進むと、商店街に分け入るように境内を構える「浄運寺」には、「原町田七福神」のひとつ「毘沙門天」がぽつねんと立ち、目をひきます。


往時の資料と比較して地形を説明する宮田講師



二つの鎌倉街道のY字合流点には民間交番が


道路が合流した三角の地形に合わせて舟型のパブが!



乾物の老舗「河原本店」のご当主から興味深い説明をいただく

 市内に点在するあとの「福禄寿」や「布袋尊」などを巡って、約2kmの開運祈願も街歩きの楽しみを膨らませます。
 しばらくして、先を行く講師の宮田さんの声に注目すると、「富澤商店」近くの道路に珍しい“街道の鍵の手”を発見。宿場町などに残された往時のままの曲がり角で、街道ウォーカーの“萌えポイント”になっている珍しい地形なのだとか。

 商店街には和菓子の「中野屋」、自家製焼豚が人気の「守屋精肉店」など老舗店に加えて、数多くの古着屋が集まり、“古着の聖地”と言われる町田の顔があることも知られています。古さを新鮮な楽しみに変える感覚が根付いているのです。

 さてここあたりでランチを、ということで、総勢50名余りのメンバーは、いくつかのグループに分かれてランチハンティングです。各地の名産品ショップのある「ぽっぽ町田」前の広場では、早くもカフェに陣取るグループもいて、私たちはすぐ先の「仲見世商店街」へ。
関東大震災後の古物市場から、戦後に「国際
マーケット」として発展した商店街で、長さ約100m、道幅2mほどのアーケード街の両側には新旧様々な飲食店や商店が立ち並び、さながら東南アジアの市場の雰囲気です。その中程にあるタイ料理の「旅人食堂町田屋台店」がお目当て。この商店街の雑多でパワフルな楽しさを体現しているような現地感覚で、カオマンガイや生春巻き、もちろんトムヤムクンも本場の味と評判です。
 午後からは、これまで午前中に歩いた鎌倉街道上ノ道(シバヒロ付近から小田急線第二踏切を経て、老舗が軒を並べる原町田中央通りを下る)が、さらに延びる往時の推定ルートを探索することになります。
 その前に、ちょっと欲張って「国際版画美術館」方面へ抜ける公民館通りを歩いて、レンガの外装が美しい「町田市民文学館」を見学。今では希少な活版印刷を手掛ける「新星舎印刷所」に立ち寄り、ここならではの貴重なお話を伺うにつけ、町田にしっかり根付いている文化の気風を感じたことでした。


赤い椿が満開の「浄運寺」


「旅人食堂町田屋台店」は現地感覚満点



仲見世商店街は”西のアメ横”ともいわれる


「まちの駅ぽっぽ町田」では蚤の市が開かれていた


看板も楽しい「守屋精肉店」


「町田市民文学館」では三島由紀夫展が開催中


「新星舎印刷所」を仕切る名取社長に話を伺う




 仲見世商店街は”西のアメ横”ともいわれる原町田中央通りが町田街道と出合う地点近くにJR横浜線の高架橋があります。ここ辺りが問題の「鎌倉街道上ノ道」の推定ルートにつながるのでしょうか。
 周囲を見回すと、目前に「町田天満宮」が。まずは学問の神様・菅原道真公を祀る神社にお参りしてから。おりからの白い梅の花が香って、境内で毎月1日に開かれる「がらくた骨董市」の賑わいが蘇ります。  ここでも七福神の「恵比寿神」が一行を迎えてくれました。
 先ほどの高架橋にもどって眺める町田の中心街。
そこに見えたのは、ホテルや高層商業ビルが立ち並び、歩いて来た活気あふれる新旧の商店がその足元を縫う都会の顔でした。往時の鎌倉街道上の道が町田を経て向かう八王子方面はどんな時代の変化を見せたのでしょうか。
 そろそろお茶の時間です。仲見世商店街近くの老舗「ひじかた園」二階の茶房では、店主ご夫妻に珍しいマテ茶のおもてなしをいただき、人出がいっそう増えた午後の商店街を後にしました。
(横山禎子写真:松美里瑛子)




「町田天満宮」には立派な牛の像が守り神のごとくに


太宰府と同様に白梅が香る


JR 横浜線の高架橋上から古道の推定ルートに思いを馳せる



「ひじかた園」の茶房でお茶のおもてなし。後方は当主ご夫妻


「鎌倉街道上の道」の推定ルートに想いを


「シバヒロ」で全員集合写真高架橋から

2020.02.09 09:01 | 固定リンク | フットパス