•  フットパス活動の記録

フットパス専門家講座 スミレ博士と歩く春の高尾山と植物観察
2023.04.09

[ 講師:日本植物友の会副会長山田 隆彦 ]


スミレの聖地、高尾山の裏道を楽しむ


4月9日(日)天気:晴参加者:16名



 高尾山、休日は特にすごい人出でケーブルに乗るのに長い列ができる。待っておれず、しかたなく1号路を歩いて登ることが度々ある。
 「みどりのゆび」では高尾山は2回目となる。前回同様、混雑をさけて、高尾山口から大垂水までバスを利用し、城山から日蔭沢へ抜ける人の少ないコースを選んだ。
 このルートはスミレの豊富なところでもある。例年、4月10日頃がスミレの見頃であるが、今年は2週間程花期が早く、既に咲き終わったものが多く残念であった。
 高尾山のことを少し話したいと思う。高尾山は都心から50㎞のところにあり、海抜600mである。奈良時代に開創された「高尾山薬王院有喜寺」があり、森が守られて来た。また、暖帯林と温帯林の境目にあることで植物相が豊かである。
 尾根を境に北斜面には、イヌブナを主とする落葉紅葉樹林が発達し、南斜面には暖帯系の常緑広葉樹林のカシ類、ヤブツバキなどが見られる。約1500種の植物が記録されている。高尾山で見つかった植物は約60種あり、スミレでは、タカオスミレ、アカコミヤマスミレ、シロバナヒナスミレがあげられる。


タカオスミレを観察する参加者

 目についた主な植物について触れたいと思う。
ニリンソウキンポウゲ科
 名前は「二輪草」だが、花が2個一緒に咲いていることは少なく、片方が蕾の状態であることが多い。中には3個もつけているものもある。キンポウゲ科には毒草が多いが、このニリンソウの葉は、加熱すれば毒性はなくなるので山菜で楽しめる。ただ、猛毒のトリカブトの葉とよく似ていて、毎年、誤食で事故が起きている。注意が必要である。北海道~九州に広く分布し、林縁や林内、草地にふつうに生える。


ニリンソウ

ニオイタチツボスミレスミレ科
 城山手前の急な登りに数株あった。香りを持ったスミレで、群生していると側を通ったときに甘い匂いがして、その存在がわかる。タチツボスミレとよく似ているが、大株にならず、花数が少ない。花は濃い紫色をして中心部の白色が目立つ。
もう一つの特徴は、花茎や葉柄などにビロード状の毛が生えていることである。また、茎の上についている葉は少し細長い楕円形をしているものが混じる。北海道(西南部)~九州の丘陵地で、明るくすこし乾き気味の林床や林縁に生える。


ニオイタチツボスミレ

アケボノスミレスミレ科
 ニオイタチツボスミレのあった急な登りに点々と見られた。地上茎のないスミレで、葉に先立ってピンク色の花を咲かせる。名前は、花の色を曙の空に連想してつけられた。北海道~九州の山地で林床や林縁に生え、少し乾き気味の林内に多い。


アケボノスミレ

タカオスミレスミレ科
 高尾山で見つかり名前がついたスミレ。ヒカゲスミレの葉の表面がこげ茶色から黒紫色になるもの。ヒカゲスミレの品種となっているが、花期を過ぎると葉の色は消え、緑色になり、ヒカゲスミレと区別はできない。タカオスミレを認めない研究者もいる。せっかく高尾山の名前のついたスミレなので、私はタカオスミレの名前を使っている。


タカオスミレ

フタバアオイウマノスズクサ科
 「京都加茂神社」の葵祭に関連する植物で名前はよく知られている。この葵祭ではフタバアオイの葉を冠や牛車などに飾る。徳川家の「三つ葉葵」は、この葉の図案化からのものである。花は3-5月に、2枚の葉の柄の基部に1個下向きに開く。花弁はなく、3枚ある萼片の上半部は外側に反り返っている。本州~九州の山地に広く分布する。


フタバアオイの花と葉

 高尾山は交通の便もよく、植物の豊富なところ、訪れる人は多いが、比較的安全なので、植物観察にはお勧めのところである。季節を変え種々の花を楽しんでください。(文と写真:山田 隆彦)

わくわく、ドキドキのスミレ観察会



 この度はスミレ観察会に参加させていただき、ありがとうございました。一日であんなにたくさんの種類のスミレに出合えるとは驚きでした。スミレ愛にあふれる山田先生をはじめ、参加者の方方にも、いろいろな植物をたくさん教えていただき、とても楽しく、充実した一日でした。今もニンマリしながら写真を眺め、余韻に浸っております。
◆最初にメモしたのはミヤマキケマン。ムラサキケマンの親戚みたいな花。


ミヤマキケマン

◆ツルには見えないツルカノコソウは、ほんのりピンクや白の小さな花が集まって、かわいい姿でした。
◆エイザンスミレは、最初は特徴的な葉だけ見せてくれて、進んでいくうちに花も見られるようになって、テンションの上げ方が絶妙。花を見たときは嬉しさ倍増でした。
◆這いつくばってクンクンしてみたニオイタチツボスミレ。匂いはわからなかったので、またいつかかいでみたいな。
◆小さくても大きくても、ちゃんと破れていたヤブレガサ。
◆衝撃の雄雌連携プレーで命をつなぐミミガタテンナンショウ。葉も斑入りのようなのがあったりして、いちいち立ち止まりたくなる植物でした。
◆並んで咲いていたマルバスミレ。白い花びらも丸くてかわいかったです。
◆ナツトウダイは面白い形の花が印象的。最初「ナットウダイ(納豆台?)」だと思い込んでおり、途中で「ナツトウダイ(夏灯台)」だとわかって笑っちゃいました。

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ナツトウダイ

◆青空をバックに、ワインレッドの花と黄緑色の新葉が映えていたミツバアケビ。
◆予想外にちっちゃくて、花びらがクルンと丸まったニョイスミレ。
◆最後の方でやっと会えて感動したタカオスミレ。葉が茶色がかっているのはカッコイイですが、これもUVケアなのでしょうか?
◆ヨゴレネコノメ、名前を気の毒がられて、きっとみんなに覚えられていますよね。
 これまでスミレの種類はタチツボスミレしか知らず、違うのもいろいろ覚えてみたいと思っていたところでした。この観察会でいっきに頭の中が飽和状態になりましたが、少しずつ復習して整理・確認中です。でもそんなことしてる間にスミレの花の季節は終わってしまいますね。早くも、また来年の春が楽しみです。
(文:玉置 真理子写真:山田 隆彦)
2023.04.09 19:58 | 固定リンク | フットパス